遺書は精神的なメッセージで形式自由だが、遺言書は一種の「公的文書」
”遺書”と”遺言書”は言葉は似ていますが、全く別物と考えたほうが良いでしょう。簡単に言うと、遺書は遺族に対するプライベートなメッセージに過ぎませんが、遺言書は相続手続きのために使われるもので、公的な性格を持つものです。
遺書は形式・内容とも自由
テレビドラマなどで、式が近づいている人が、「私が死んでもみんな仲良くするように」とか、「お母さんを大切に」などの希望を残すことがありますが、これはプライベートな「遺書」に当たります。
遺書はどんな内容を勝ても自由で、形式にとらわれません。家族一人一人に書いても良いし、ノートにこれまでの思い出を書き連ねるなど、さまざまな形で自分の気持ちを伝えられます。
このような遺書は、残された家族にとって精神的な支えになるという意味では意義がありますが、遺産相続の手続きにおいてはほとんど役立ちません。
「遺言書」の要件は法律で定められている
これに対し、「遺言書」はもっと実務的な性格を持っています。
法律上、遺言書とは一定の要件にしたがって作成された文書のことで、要件を満たさなければ効力がありません。たとえ日記に、「○○に財産を相続させる」と書いてあっても、日付や署名などの要件が欠けていると遺言としての効力はなく、遺族にそれを実行するように強制することはできないのです。
また、遺言書は実際の相続手続きにおいて重要な役割を果たします。例えば、遺言書の中に、「長男の○○に預貯金を相続させる」「友人の○○に不動産を遺贈する」といった文言があると、その人は原則として、遺言書を関係機関に持参して相続手続きを行うことができます。
もし、遺言書の内容がいい加減で法的な効力がないと、これらの手続きができません。仮にできたとしても、後で相続人の誰かが、「あの遺言書は無効だから相続手続きをやり直してくれ」と言い出して、トラブルになる可能性があります。そのようなことを防ぐためにも、遺言書は正確に作らなければなりません。
身分上の手続きの根拠書類にもなる
遺言書は相続発生後、子供の認知や廃除など身分上の手続きをする際にも必要になります。
例えば、「子供を認知する」と遺言した場合は、「遺言執行者」が就任後10日以内に、市町村役場に遺言書を持参して手続きをすることになります 。